先日、新築戸建のトータルコーディネートをある大手企業様より依頼され、顧客のAさんにお会いした時のこと。Aさん曰く、
「今、沼に入っています・・」
とのこと。沼・・。お話を聞いていると、もしかしてAさんと同じような心境の方は他にもいるのではないかな~と思い、シェアさせていただきたいと思います。
インテリアの沼
Aさんは新居に対してのコンセプトやこだわりを、理路整然とお話される方。
情報収集手段としてinstagramをよく見られているそうで、インテリアの事例や、「新居でしてよかった7選」とか「これ絶対やって」的なものもよく見られていました。
家づくりや模様替えを検討している方は、AさんのようにSNSから情報を得ることは、今は普通にしていることだと思います。
「それを見ていると、全部がよく見えてきます。そして言っていることがみんなバラバラで違っていて、逆に何が正しいのかわからなくなっています・・」とAさん。
私もinstagramを使って発信をしている身なのであまり強くは言えませんが、家づくりの際にinstagramから情報を得るのは、話半分の付き合い方がいいかなと正直思っています。
話半分でいい理由
InstagramなどのSNSの情報は、発信する方の良心でやっている(本当にお勧めだから知ってほしい!という)こともあれば、
実はスポンサーからの報酬があって、本人はそこまでいいとは思っていないけれど「お勧め感」を出しながら宣伝している場合もあります。
どちらにしてもそれは、発信しているその人にとっての正解で、バックにスポンサーがついているのであれば、それこそスポンサーの販促の一環、つまりCMを流しているということにすぎません。
それが受け取る人にとって、真実になるか否かは、自分自身で決めていく必要がある、ということ。
Aさんのお話で印象深かったのが、ある方のブログで「背が150㎝程度の人はテーブルの高さを65センチにしたらちょうどいい、まったくノンストレスで快適な生活が送れます」という内容の記事を読んだそうです。
そこで早速、65センチのテーブルを探したけれども気に入るものがなく、テーブルの脚を切って使用するかどうか検討中、とのこと。
ご自身の中で潜在的に、テーブルの高さが合わない気がするとモヤモヤしていたのであれば、そのモヤモヤにヒットする記事だったのだと思います。なるほど!と膝を叩いたことでしょう。
もちろんその記事の通り、身長によってテーブルや椅子の高さは人間工学的に推奨値があります。でももっと言うと、身長ではなく座高や足の長さも関係しています。
もっともっと言うと、椅子の座面がクッションなどの柔らかいものなのか、木や樹脂製の硬いものなのかでも座ったときの印象は異なりますし、さらに言うと姿勢やおしりの形などによっても変わります。スリッパを履く履かないなどの独自の生活スタイルや、これまでの家具経験からの価値観なんかも関係してきます。
そうなると、背が150㎝の人はテーブルの高さ65センチを買えば「万事納得の正解」なのか・・?
もうお分かりですよね。
大事なことは「たくさん座って、たくさん試す」こと。ネット上の誰かの意見ではなく、自分で体感して「しっくりくる」ものを選ぶことなのです。
便利な世の中になっても、人の根源は変わらない
けっこう難しいです。何度も座っても「ん~、よくわからん」となる場合もあります。
でもしばらくすると「この椅子は自分に馴染む」というものを、なんとなく感じ取ることができてきます。大好きな一脚と必ず出会うことができるはずです。要はテーブルの高さよりも椅子の方が大切なのです。椅子とあなたの体の骨格との相性。だから、SNSにはヒントはたくさん転がってあっても、正解は絶対に載っていないのです。
たくさんのクライアント様と同行して家具選びをしていますが、みなさん何脚も座られて、「これは違う」「わからない」「・・これは好き」と、みなさんだんだんと自分の好みの座り心地を感じ取ることができるようになっていきます。
焦らずに、店員さんの圧にも負けずに、椅子に座るときは靴を脱いで少しリラックスしてみましょう。姿勢は正しくなくてOKです。座っている時間は、ご自身のペースで過ごすことをお勧めします。
家づくりは一生に何度とない大切なタイミングです。そして多くの方にとって人生で一番高い買い物になるでしょう。家具選ぶも含めて、自分の感覚を無視し、SNSを信じて選択する人が増えることの方が私は本当に心配です。
情報過多の時代、情報とは上手、程よい距離感でつきあっていきましょう!
一旦スマホから顔をあげて
ちなみに私はSNSは全く見ないとは言いませんが、インテリアブランドの動向や展示会、新作発表会に出向いたり、一流の編集者が集めてきたものが載っている雑誌から情報を得ています。口コミや使い手の方の素朴な意見にハッとすることはもちろんありますので軽視もしませんが、プロが出している情報をまず取得した上でクライアントに合うかどうかを検討します。
情報を掴みにいったつもりが情報に振り回されていないかどうか、時々スマホから顔を上げて深呼吸してみましょう。
あなたの答えは、あなたの中にしかないのです。
インテリアコーディネートやリノベーションコンサルなどをサポートさせていただいている方には、家具選びのサポートももちろん含まれております。
空間を構成する要素として家具は重要!楽しく素敵なものを一緒に選んでいきましょう!