column04 安い家具ってなぜ安い?

こんにちは!中居綾です。
さあ今日は、私の得意分野の「家具」についてお話ししたいと思います。



ステイホームの浸透、テレワークの奨励など・・ライフスタイルの多様化の真っただ中にいる私たちですが、その中で「自分にとってより良い暮らし方」について考えを巡らせる方も多いのではないでしょうか。



今暮らしの中を整えるのであれば、必然と「もの選び」に関する意識も変わってきてはいませんか?ネットでポンポン買えることの便利さを感じる一方で、「しっかり見て決める」という感覚も大切にしたいですよね。



「しっかり見て決めたいもの」の代表的なものとして「家具」が挙げられると思います。ですが、みなさん、家具って正直なところ「しっかり見ても、よくわからん」って思いませんか?



例えば、なぜIKEAの家具ってかわいいのに、信じられないほど安いのでしょう?安い上に、結構しっかりしていますよね。「これでいいじゃん!」って私もIKEAに行くと何回も連呼してしまうのですが、では、高い家具と安い家具って一体何が、どう違うのでしょう。




私も実は、全っ然わからなかったんですよね。インテリアの専門学校でみっちりしっかり学んだのですが、こういうことは意外と教えてくれない。授業でメーカー比較とかはしないんですよね。善し悪しや、選ぶ基準の判断は自分でしていかないといけないのです。ハウスメーカーで営業をしていた時も、「ここのソファを買い替えたいんですけど、何かおすすめありますか」とお客さまに聞かれて、わからな過ぎて時が止まってしまいました。笑



「私はインテリアも家具も好きだけど、善し悪しや基準についてはわからないんだ」と痛感して、独立するまでに一回は家具業界に行ってみよう、家具屋さんで働いてみよう、と思って転職をしたのでした。業界に入ると見るところ、見えるところが自然と変わります。そして、言葉にするのは難しいのですが、私にとっての「一つの基準」のようなものもできたように思います。素材や作りの違いから、大人の事情も含めていろいろわかるように^^そこで今回は、家具の中でも「値段の安い家具」は何がどうして安いのか、をテーマにお話しします。

安い家具には「安い」を叶えるための色々な工夫がある


家具ってみなさん、洋服や日用品と違って、どんな特徴があると思いますか? 



そう、まず大きいんですよ。大きい。そして重い。ここが運命を左右するポイントなんですよね。安い家具は、安い→必然的に流通する(買う人が多い)→流通しやすくするために→運びやすくする・・・という構図があります。まずここが「安さの疑問」を解く大きなポイントです。


そしてさらには、お客さんに家具を買わせる前の「下準備」を徹底してやっています。


安い家具屋さんが具体的にどのようなことをしているか、下記にまとめました。

① 小物の販売が強い


安い家具屋さんの特徴として、小物をメインで売っている、これが大きな特徴です。



いきなり家具は買わないけれど、小物だったら買えますよね。小物を買ってもらってお近づきになっておいて、将来家具を買ってくれる見込み客を作っているのです。



無印良品はまさにそう。学生の頃は手帳や文房具、だんだん洋服に移行して、一人暮らしで家電セットにベッドカーテン、結婚した後も収納でお世話になります・・素敵な家具が欲しくなったらIDEEへ・・(IDEEは良品計画のブランドです)というように、うまく顧客を育てているんですよね。

② 接客をしない


安い家具屋さんは、全くと言っていいほど「接客」がありません。物を魅力的に陳列して「はい勝手に見て!」というスタンス。接客・提案の部分にコストをかけません。



接客しない代わりに広告、陳列にかけるパフォーマンスがずば抜けていて、無印良品は心に届く手紙のような広告のコピーがすばらしいし、宣材写真も幅広い層に届く温かい雰囲気が素敵です。ニトリはもうあのフレーズですよね。「お値段以上」。CMの印象が強く、そこにブランディングが集約されている。IKEAは店舗に行くと、まずものすごい量のコーディネート見せ、イメージを膨らませ、購買欲求を掻きたてる戦略。自分で選び、品番を抑えて自分で倉庫で探すという行動は「オリジナル感」を育てる演出。それもすごい。

繰り返しますがどこも共通して、現場での店員さんからの「それ、いいですよね〜、私も持ってます〜」という声かけは皆無です。

③ 組み立ては自分で


組み立てが自分でできるような作りになっている。これも要は人件費削減の一貫なのです。組立て要員を自社で持たないこと。顧客から「組み立てもお願いします」と言われても、外部委託でもOKな程度の作りにしておく。(専門性、特殊性を排除しておく)



これって結局、あえて悪い言い方をしますが「家具の仕組みが単純」ということです。工作の延長・・っと言ったら言い過ぎかもしれませんが、購入者が100人いたら100人全員が作れるように設計されています。そうするための企業努力はもちろんあります。



逆を言うと、高級家具で「お客様の方で組み立ててください」というものはまずありません。それは、プロでないと組み上げられない作りであり、素材、重量なども素人が取り扱うのは難しいものであるということです。



昔は組み立ては「家具職人」がしていたこと。現代のように物流も盛んではなかった頃は、家具は地域で買うもので、遠方への納品や移動はありませんでした。今は物流が発達したため、家具の行き来も昔より簡単になって「自分で組み立て」方式が主流になりましたが、それがはここ数十年、本当に最近の話なのです。

安さを実現する工夫のまとめ

小売の販売をメインでやっている家具屋さんって、買い手も近づきやすいですよね。さらにはTVCMでよく見聞きするとより身近になりますし、接客もしてこないことは、逆に自分のペースで選ぶことができて気楽。



簡単に買えるし、組み立ても自分でするから愛着もわく。→これで十分じゃん!と言う心理にさせる、こんな構図があるのです。

あなたはZARAやユニクロだけの人ですか?


買いやすい家具を否定するわけではありませんが、



「自分で組み立てられる」
「ものすごい量が流通している」
「コストダウンのための工夫がすごい」



と言うことは、わかりやすく言うと「プチプラ服」と同じです。対象が「服」か「家具」かの違いというだけで、本質的な販売戦略は同じなのです。



ファッションで考えると、私も無印のセーターは毎年1枚は買いたくなっちゃうし(ひと冬着倒す用で)、去年は初めてZARAでサンダルも買いました(ひと夏履き倒す用で)。さらにブーツも今年買ってみました。どれもとてもよかったです!ですが、やっぱり1シーズンで終わりかな、と言う感じはありました。ただ、1シーズン本当に便利に過ごさせてくれてありがとう!とお礼の気持ちが湧くくらいに良く、後悔の気持ちはありません。



一方で、無印もZARAも買うけれど、TOMORROWLANDのお洋服が自分の中では定番で、20代の頃はその中でもカジュアルなMACPHEE、30代前半はきれいめのBallsey、40代間近になって今はリラックス感のあるGALERIE VIE・・と、年齢や趣向の変化にあわせて自然と変わりつつも「TOMORROWLAND」全体の世界観を長く好んでいます。「プチプラで高見え」を掘り当てる楽しさもいいですが、今の自分の価値観に合う服を纏っていたいと思いますし、素材や仕立てのいい服を手に取るのは年齢を重ねてこそ大事にしていくことの1つなのだと感じます。



みなさんはどうですか?お気に入りや定番の洋服のブランドはありますか?きっとありますよね。家具も同じだと思います。安い家具を楽しく便利に買うのはいいけれど、そればかりになるのはちょっと違和感。自分のライフスタイルにあわせて「今の自分に合ったもの」を選んでいきたいですよね。それは決して贅沢なことではないと思います。

今年買ったWhimGazetteのエコファージャケットは
少々若づくりすぎたかもわかりません



インテリアコーディネーターが担う役割

そこで、家具選びに役に立つのがインテリアコーディネーターと言う職業の人です。



多くのコーディネーターはきっと、洋服屋さんより家具屋さんに脚を運んでいます。自分の家具だけでなく、クライアントの家具を選んでいるので、情報収集はもちろん、高級家具、海外ブランド、日本のブランド、色々な家具ブランドの方と分け隔てなく話をしています。そして「家具」として家具を見るのではなく、「お客様を理想の生活へ連れていく」とためのツールとして家具を選ぶので、価格・デザイン・価値観を総合的かつかなりフラットな目で見ています。



安い買い物ではないですから、多岐にわたって色々知っている人話を聞くことは意義のあることだと思います。手前味噌にはなりますが、フリーランスのコーディネーターってやっぱりいいですよ。それは、縛りがないから。笑 家具ブランドに務めるコーディネーターは自社の家具を当然勧めますし、ハウスメーカーやデベロッパーのコーディネーターは提携のある家具ブランドの中から選ぼうとしますが、フリーランスはフリーなので。なんの縛りもないので提案の幅が広い。「本当に自分がいいと思ったもの・お勧めしたいもの」が選択の基準になります。基本は足で実物を見にいきますが、お客様のベネフィットのためならば、逆に楽天やバイマなどで探すこともあります。お客様にとって一番の解決策となる選択を何より重視しています。



家具選びや住まいに悩みのある方は、1DAYセッション、もしくはインテリアレッスンにいらしてくださいね。家のこと、家具のこと、ざっくばらんにお話しすることから始めましょう!


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次回は逆に、「高い家具はなぜ高い」をテーマに書きます。
高い家具も高い理由がこれまた1つではない・・これまた奥が深いのです。ぜひお楽しみに^^



お読みいただきありがとうございました^^



中居 綾