高い家具ってなぜ高い? 

こんにちは!中居綾です。



前回のcolumn04 安い家具ってなぜ安い?はご覧いただけましたでしょうか。(まだの方はこちらからどうぞ!)今日はそのcolumnのアンサー回(?)として、「高い家具」についてお話したいと思います。



高い・・と言っても、いくらぐらいの価格から言うかはなんとも難しいので、定義としては「セールをしない家具ブランド」の家具ということにしたいと思います。わかりにくいかな?


例えば有名どころでいうとarflex(アルフレックス)さんはまずセールはしないですね。ショールームで展示した家具等を展示品価格として提供している企画はしていますが、私が知る限り正規品のセールはされていません。また、売り切りたい商品を値下げするということもありません。ここだけでも前回お話しした「安い家具」と差別化されますね。安い家具は商品の循環が早いのと、商品を一気に作ってストックしているため、廃盤が決定しているストック品は早く売り切るために安くしたりしますと前回も書きました。高い家具は基本「受注生産」。「セールをしない=商品の多くが受注生産だから」という構図も見えてきます。

 

高い家具の6つの特徴

高い家具につきましても、その特徴を下記に述べていきたいと思います!

1 受注してから製造する

使い手の好みに合わせて、張地、色、素材、サイズをカスタマイズできることできます。例えば同じシリーズのソファでも、布かレザーかを選べたり、2シーターか3シーターかカウチか、などと選べたり、脚の高さやデザインを選べたり・・など、買い手のベネフィットに合わせた様々な提案が可能な場合が多いです。同じシリーズなのに、選ぶ人によって全く違う雰囲気の物が出来上がるから面白いんですよね。ソファでいうと、ファブリック、レザーで100種類位が平均的かなと思いますが、高いブランドほど選べる種類が豊富である傾向にあります。


上の2枚の写真のソファは、色違い&形違いで同じブランド、同じシリーズのものです。両方ともインテリアの作り方としてはけっこう似ていますが、中心にくるソファの色が違うとけっこう雰囲気は変わりますよね。1枚目はベージュ系にブラックで締めているようなインテリアで、2枚目はグレー系に淡いベージュをポンポンと差し入れている。あなたはどちらの雰囲気の方が好きですか?

2 製造工程を徹底して管理している


例えば「レザー」でソファを作る場合、家具に使うレザーはバッグや小物と違って広い面積が必要になってきます。安定的な厚みも必要です。所々薄いと「座る」ためのソファとしてはあまり良くないんですよね。そうなると革を加工する技術も必要。また、それらが安定的に供給できる体制も必要。さらにはもともとの牛さんの状態も大事(ケンカしてけがをしている牛、虫刺されがたくさんある牛はすごく多いそうで、肌の状態が元々きれいな牛を供給するのも大変なことですよね)。高級になればなるほど、その加工技術や体制を厳しく徹底している=お金がかかっているということにつながってきます。


安いレザーに関していうと、パッチワークの様に継ぎはぎされているもの(デザインの様に見えますが端切れをつかっている)とか、レザーとだけ書かれていて実際は牛革ではないとか(何革か謎のもの、時々あります)、生ハムかよ!と突っ込みたくなるくらいめちゃくちゃ厚みが薄いけど塗り物でなんとか厚みを出している、とか、いろいろあります。笑 

3 職人技が光っている

ソファの張り込み、椅子の張り込み、椅子のアームの部分、テーブルの納まりなどなどなど・・挙げたらきりがないくらい、高い家具は細部の納まりが本当に素晴らしい。特に日本の職人さんが作ったものは、買い手に渡った家具がどの職人さんがつくった家具なのかわかるくらい、各メーカーで徹底管理されています。逆をいうと、もし不具合が出た場合は職人さんにフィードバックされるということ。そうなると職人さんも1つ1つの精度を高く家具を作ることにつながりますよね。そのようなブランドは、実際のところ製品クレームが起こるのは年に1回あるかないかということです。すごい。

 

4 素材がいい

これは分かりやすいですね。とにかく素材がいいんです。木使うのであればその木目、強度、伸縮性、生産地など徹底管理されたものであったり、セラミック、大理石なども美しい品質を保った仕入れ・製造をされていたり・・。ファブリックも、あまり発表はされていないけれど、高級ブランドの洋服を作る工場と同じところで生地を作っている・・とか(技術が高いということです)、高い家具にはそういう背景もあったりします。最近では天然素材もさることながら、再生素材にも各ブランド取り掛かっていますので、「素材」に関してはこれからもっと深堀されていくのだろうなと思います。

流行のセラミック、往年の大理石の他、
今後は新しい素材や再生素材に期待




5 輸送コストが上乗せされている

これはちょっとこれまでのお話と毛色の違うこと。輸送コストです。家具って大きいですよね。そして重いです。車と一緒で、大概飛行機では運びません。船です。海外からくるものはそういった輸送コストが上乗せされています。たとえジャパン品質より劣る家具であっても、輸送費分割高であるということはあるのです。


とはいえ海外の方の感性で作られた家具のすばらしさ、面白さは絶対にありますので、ここもどこに価値を置くかは自分自身の感性によるところだと思います。

6 安い家具とは作り方がそもそも違う

前回、「安い家具は買い手の方で組み立てる」という話を書きましたが、高い家具は買い手が組み立てることはまずありません。作りが複雑かつ重量があります。例えばソファで言うと、安い家具は木で骨組みを組んで、継ぎはぎしたウレタンを重ねて、カバーをして作られています(かなり雑な言い方をしていますが簡単に言うとこんな感じ)。ウレタンが薄いと、その下の木枠の感じが太ももの裏にダイレクトに伝わったりするので一つの目安になるかと。高い家具はウレタンの厚みや硬さを部分に分けて貼り分けしたり、ウレタンを継ぎはぎせずフォームにして型に流し込んで作るやり方をしています。さらには木枠を使わずにスチール枠を使ったりもします。結果、高級になればなるほど家具の重量は重くなります。

結局、高いからいいのか 安いから悪いのか

さて、私は高いからいい、高いと壊れない、高いと長持ちする → さあ、高い家具を買おう!と言いたいわけではありません。安い≒間違っている ということでもないし、高い≒正しい というわけでもない。


家具を選ぶときに値段は気になりますが、値段はあくまでそのブランドの基盤を維持し、商品を流通させるためにブランド側が決めた数字というだけなので、最終的には「あなたが使う」「あなたの家にくる」ということを考えた時に、どのような選択をするかを考えるきっかけになればいいなと思っています。





インテリアコーディネーターができること

わたしも世の中にある全ブランドを知っているわけではないですし、全ブランドの全作り方を網羅しているわけではありません。ブランドには機密事項もありますし、知り尽くすことは不可能。お客様からブランドを教えていただくこともあります。その際には、そのブランドに出向いで話を聞きます。エンドユーザーとしてではなくコーディネーターとしてさまざまな質問をしますので、お客様が何を必要としていれどこが外せないポイントなのかを冷静に分析しています。ありとあらゆる素敵なものが世の中にはある中で、「冷静に絞る」というのは一つの価値なのではないかと思います。


値段は一つの目安にはなりますが、大切なのは家具一点に集中して考えるのではなく全体のバランスをみることです。そして「今の自分に合ったものであるか」という視点で総合的に考えること。もちろん「予算」はあってOKです。予算の中で、なにをどんなバランスで選択していくかが大切です。


いかがでしたでしょうか。安い家具、高い家具の仕組み、ざっくりした内容でしたが少し視野が広がりましたか?


家のことって、本当に決めることがたくさん。忙しい方にこそ、コーディネーターをうまく使って「なりたい自分、住みたい空間」を実現していただけると嬉しく思います!

 

1dayインテリアデザインセッション、2月のセッション枠はお陰様で満席となりました。
3月枠は2月23日頃オープンとさせていただきます。



お読みいただき、ありがとうございました^^



中居 綾