story06 自分だけの空間を持つよろこびを −ワークスペース&寝室のリノベーション

クライアントのMさんと私は出会って約10年。Mさんはいつも私の前を歩み、仕事がとてもとてもできて、綺麗でセンスも抜群で。「何年後はMさんみたいになりたい…」と自然と思わせてくれる方。


そんなMさんから『綾ちゃんにインテリアお願いしたい、お仕事として』と言われた時は、目玉が飛び出るほど驚きました。だって、『Mさん自分でできるでしょ!』です。笑 センス抜群だし、自分の『好き』もハッキリされていて。私の出る幕はないのでは?とまず最初に思いましたし、言いました。


すると『こだわりすぎて何年も手に着かなそう。でももう部屋づくりは進めたい気持ち。ここはプロに任せるわ』と。


仕事ができるMさんは、仕事を人に振るのも上手なんだわ…。そう納得し、それならばと私も戸惑う気持ちは捨てて、責任を果たす方向にシフトすることに。


さて、Mさんが自宅のインテリアについて考え始めた経緯は、このような理由からでした・・

ちなみにMさんのおうちは
お世辞抜きでめちゃくちゃ素敵です
憧れる・・!

1  気づいたら私の場所がなかった

今の住まいに住み始めて10年弱。都内のリノベーション済みマンションを購入されました。


お家の仕様を少しご紹介すると、床は無垢のオーク材、リビングの壁にはホワイトクロスと落ち着いたベージュのカラーのアクセントクロス、洗面所の壁はタイル張り・・など、ちょっと気が利いた内装で、品がいい。いかにも「リノベしたっす!!!」みたいな、リノベ感丸出しで逆に疲れるわみたいな内装ではなくて(←こういうのたまにあるw)、家具や小物で自分好みに家を育てていける素地を感じる内装と、間取りも気に入られて購入されました。

内装に気が利いてると嬉しくなる



住み始めは夫婦2人で。しばらくしてお子様が誕生され、さらには一人暮らしだったMさんのお母様が上京され、あれよあれよの内に4人住まいとなりました。


100平米を超える広いマンション、4人住まいは何の問題もない広さです。ですが、コロナ禍を経て、在宅ワークが主流となってしばらくしてMさんは気づきました。


『なんで私、リビングにずっといるんだろう・・』


***


数年前、寝室兼スモールリビングにもなるように、一番広い居室にお母様に住んでいただくことに。また、元々在宅ワーカーのご主人様には最初から仕事部屋がありました。もう一つの居室はMさん家族3人の寝室。一緒に暮らす大人の中で、Mさんにだけ、1人だけになれる自分だけの『間』がないことに気づいたのです。


『ここはそもそも私が気に入って買った家なのに・・』


家族が増えることは嬉しいこと。助け合って支え合って、個々の意見も認め合う素敵な関係性を築かれているご家族。ですが、それはそれとして、


『自分だけの時間が取れる間が欲しい』と思いを募らせていました。

2 居室の交換


そこで、お母様の居室と、Mさん家族が3人で使っている寝室を交換するアイディアが生まれました。


お母様の暮らしをよくよく観察すると、お母様自身も広いお部屋を持て余している様子がありました。相談すると、このアイディアはすぐに快諾。そうと決まれば広い居室を活用して、「Mさんの間+家族の寝室」としてお部屋をリフレッシュすることになりました。

3 まず最初にしたこと − 想いの整理とコンセプトワーク

ここまでに至ったMさんの「想い」の部分、そしてこれからできる自分だけの空間は「自分にとってどんな場所でありたいか」を話し合いました。Mさんは好きなものがはっきりしていてブレなくて、「こうしたい」ということもほぼほぼ決まっていました。それでも、一緒に整理して標準を絞る過程はすごく大切です。イメージするとしたら、果汁10%のジュースではなくて100%を目指す感じでしょうか。絞れば絞るほど、濃厚で素材が生きたその人らしいお部屋ができていきます。

Mさんからいただいた「好き」の写真たち
Mさんからいただいた「好き」の写真たち
たくさんの好きをいただいて、
シートが2ページに渡りました^^笑


想いを整理していくうちに、私の中では、静寂な森の中(軽井沢のような場所)で自分の時間を自分のペースで楽しむMさんの姿が浮かびました。そこには小さな動物も自由に行き来していて、1人で居ても全然寂しくない環境。この空間全体がMさんのことを受け入れ包み込んでいる様なかんじ。でも、少女のする妄想の世界というわけではなく大人のとしてのスッとした自立さもちゃんとあるというような。


そんな風に、Mさんとの対話から生まれた感覚と私の中で感じたこと、静寂・集中・癒し・非現実感・特別感・・そんなイメージを空間に落とし込むために、『Forest bugs!』という言葉をコンセプトに据え、プレゼンテーションを重ねました。


最終的にまとまったのはこちらのインテリアイメージです

インテリアイメージを画像にするとこんな感じ
インテリアイメージの言葉にするとこの言葉
インテリアカラーは、
この色合いでまとめていきます
新しく迎える家具のプラン

4 現実的に、どんな段取りで進めるか

さて、コンセプトが決まり、家具の選定やカラースキーム(内装・窓装飾)の検討に入ると同時に、「このリノベーションがすんなり進むためにはどんな段取りで進めていくか」を考えることも重要なポイントでした。


物の移動や断捨離については、新築よりもリフォーム・リノベーションの方が体感的にはシビアです。特に引っ越しを伴わない小規模リノベの場合は、暮らしの営みは止めずに物の移動や仮置き、新たな収納計画を進めていく必要があるため、段取りがとても大変だし、大切です。

一旦はものだらけの空間に
住むことになるのでそれなりの覚悟が必要



特に今回はクライアントのMさんだけではなく、お母様のお引越し移動もあるので、きちんと流れを共有しておくことは無駄なストレスを生じさせないことにつながると思いました。


廊下に面した1畳弱の物入れが有効活用できていない状況でしたので、そこにまず手を入れスペースを確保。次に、「ご主人のもの」「Mさんのもの」「お母様のもの」「お子様のもの」「家庭を運営するためのもの」・・それぞれのものをどこに収めるかをパズルのように検討しました。


改めて収納状況を見直してみると、意外と個々人の物の境界線が曖昧だったことにも気づき、結果的に、家族それぞれの物の収納場所についても見直す機会となりました。そして「ここは私の場所」「ここは僕の場所」というように個々の場所が無理なく整理されたという、嬉しい手順も踏めました。


そして実際の流れはこのようなこのような感じです。

11月
初回打ち合わせ

12月
インテリア提案(1回目)
収納計画を見直

1月
インテリア提案(2回目)
物の整理スタート

2月初旬
居室の交換
既存ベッドの廃棄、新調

2月下旬
内装工事
新規家具搬入

お部屋の交換と工事を1日で済ませるには少しボリュームが大きく、お母様への負担も考慮して、工事より先に部屋の交換(引っ越し)を済ませ、工事室が正式にMさん家族のお部屋になってから工事をすることとしました。


Mさん家族が段取りよく淡々と進めて下さったこともあり、工事までとてもスムーズに進めることができました^^

施工室は元お母様の荷物のありましたが
施工前にしっかり片付けてくださいました
excellent!!!!

5  いざ、工事〜スタイリングへ

今回の計画には輸入クロスを2方面に貼る内容が伴いました。輸入クロスを貼るのに経験の深い職人さんにきていただき施工。窓かけは、カーテンからウッドブラインドに変更しました。


(工事の様子はリールにしていますのでこちらからご覧いただけます!)


工事後、新規購入した家具を入れ、Mさまご自身で選び抜かれた小物をセッティング。(小物はアート、クッション、ベッドスロー等は中居がご提案し、細かな小物はご自身で選ばれました。コンセプトを共有していましたので、Mさんは都度ご相談頂きながらもお部屋にバチッと溶け込む素敵なものを楽しく迎えられました)

テーブルは一緒に組み立てました!

6 できあがったお部屋の様子と、思わぬ副産物

こんなお部屋になりました〜!

Before・・




after〜!!
欲しかった「間」の部分!
ホームオフィスはこんな感じです。

マティスモチーフのクッション
かわいい!!!
ベッドリネン、スロー、ラグも!

薄い本棚にはお子さんやMさんの本を。
夜の読書タイムが充実しそう!

インテリアをつくっていく過程の中で、Mさんのからのワードの中に「素敵なコンセプトのホテルが好き」というお話が度々ありました。これまでも、素敵な旅先を訪れているのは私も知っていて、Mさんは「旅」や「旅先で過ごす時間」から受ける良質なエネルギーを大切にされていることを感じていましたので、寝室という超日常空間に、少し非日常のひと匙は加えたいと思っていました。


それを「ホテルライク」という言葉で片付けるのはあまり好みではないのですが、「ホテルのお部屋で体感する『もてなし感』って、色々あるとは思うけどわかりやすくいうと冷蔵庫じゃない?置いてあるお茶じゃない?」という会話から、Chiiilという素敵な冷蔵庫や、繊細なフォルムが美しいカリタのケトル、お茶などを入れておくシェーカーなどを迎えることになりました。(ホテルライクって冷蔵庫じゃね?のようなストレートな発想、個人的にすごく好きです^ワ^)

Chiiilの色は「モス」!
このお部屋に絶妙にぴったり!!



で!大切なことをご紹介し損じておりました。そもそもこの部屋をこのようにしたスタートは「私の場所がない、欲しい」から始まったんですよね。Mさんのお仕事スペース兼、夜にはのんびりした時間を過ごす場所、はこのように仕上がったわけですが、

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: IMG_6887-1-scaled.jpg
こちらですね


ここで・・思わぬ副産物があったのです・・!あえて四角いデスクを選ばず、半円型のテーブルを選んだのは、夜ベッドで寝ているお子さんを気にせずPCを開くには少しベッドからずれている方がいいから、というのが大きな理由だったんですよね。(結構PCの画面は明るいので、その明るさが睡眠妨害にならないように)


半円で真ん中に足があるタイプだったら絶対に体の向きがベッドと一直線にならずに少し斜めになるので、その体勢を狙ったのであります。他にも理由があって選ばれたのですが、半円のテーブルは結果的に、こんっっっな可愛いコミュニケーションの場になったのです!

(工事初日夜のMさんとお子さんの会話)

Mさん「●●ちゃん、後でそこのお椅子に座って、お母さんと一緒にお茶を飲もうよ

お子さん「ん〜・・ちょっとさ・・・おやつたべたりしよう?(ちっちゃい声&にっこり)」



なんっっって可愛い会話〜!!!そして・・実際のお茶の様子・・!

仕事用の椅子だけじゃなく、
スツールも用意してほんとによかった!!



そうなんです。もちろん「Mさんの場所」として作ったスペースですが、3歳のお子さんにとっても「ママとの静かな二人時間を楽しめる特別な空間」となったのです!この副産物は・・すごい・・!

また別の日。宵のお時間・・!
Chiiilで冷えたビールと共に・・

宵のママとのお茶(お酒)タイム^^
ママとの二人でこんな特別な時間、
嬉しいよね・・!



もし、カチカチの「いかにもホームオフィス」として作っていたら『ここはママの仕事場!触らない!めっっ!!』という雰囲気になっていたかもしれませんが、円形のテーブルはお子さんもすぐに受け入れられ、二人で並び、程よく向き合ってコミュニケーションが取れる、昼間と夜とはでは違う価値をもたらす場になったのです。


30–40代の女性は「仕事も家庭もプライベートも全部繋がっている」という感覚に自然となりやすい年代です。きっちりクッキリと「仕事とプライベート」を分けるのではなく、「それらを共存させる」という価値観にピッタリはまった瞬間を垣間見られました。

7 「私」にフォーカスすることで、結果的に「家族」がよろこぶ空間に

リノベされたお部屋を初めてみたお子さん(3歳)のリアクションを、動画に撮って送って下さったのですが、もうもうもうもうめっちゃ可愛いいいぃぃんですよ。「かわいいー!きれえー!」と感動しているお子さんがとっっっても愛くるしくて!!!その後、保育園のお友達にも「ねんねのお部屋きれいだから見にきて!」とお誘いしているそうです。も〜可愛すぎるぞ!


私は基本的なスタンスとして、クライアントであるMさんに喜んでいただきたくて、Mさんに焦点を当てて仕事をしています。それは、これはからもそうでしょう。でも、結果的にお子さんやご主人から喜びの声をいただいたり、リアルなリアクションを見ることができた時には、本当に嬉しくて、涙が出てしまいました。ご主人様も、何度も施工中見守りに来て下さって、「めっちゃいいね」「壁紙可愛いな〜」と呟いてくださるのが嬉しかった^^


ママが幸せだと家族も幸せです。これは本当にそう。ママはおうちの中の太陽ですからね。ママに限らずですが、女性は「自分」にとって最高の環境にいる時にこそ力を発揮して、結果的に周りの人も幸せの渦に巻き込んでしまうものだと私は思っています。今回は、Mさんのお母様(もう一人の太陽)にとっても、暮らしが整う機会となったと感じられて、本当に何よりだと思いました。

サービス後のご感想です

工事後1週間、折に触れてたくさんの感想を送って下さったMさん!
「昼間は仕事に集中できて、夜は夜で雰囲気良く過ごせて、本当にやってよかった」とお話しくださいました。



「日本の練馬とは思えない。ここはヘルシンキか!」と、そんなリアルで真っ直ぐなリアクションが嬉しい
「素敵なホテルみたいになって、ホテル好き欲も満たされた」「オンラインで話した会社の人にも今ホテルですよね?って言われた」・・連日連夜届く感想に(笑)、本当にMさんの嬉しいお気持ちが投影されていて、感激しました。



そして、後日改めていただいたお手紙の一部を、ご感想としてご紹介させていただきます。

綾ちゃん

この度は私の好きなものをたくさん聞いてくれて、私がこれからどう過ごしたいかをイメージして素敵なコーディネートをしてくれてどうもありがとう。自分が好きなものに囲まれているってとても満たされるし、毎日幸せを感じられます。


北欧、グリーン、ずっと憧れのあった家具や小物、美しいもの、少し味わいのあるもの、気に入ったものに囲まれて、これから先の10年20年、自分らしく過ごせそうです。家族も喜んでくれて嬉しい。

暮らしというのは日常だけど、その中に少しとどこかお出掛けするようなうきうき気分が加わりました。綾ちゃんにお願いして本当によかったなあと思っています。・・・



Mさんのこれからも一歩一歩前へ踏み出す「エネルギーになるインテリア」が叶い、私も心から嬉しいです!
Mさん、改めて、Chiiilで冷えたシャンパンを、素敵な窓辺で一緒に飲める日を楽しみにしていますね^^

本当にありがとうございました^^

施工後、Mさんが撮って下さった写真。
Mさんの愛情を感じます^^



***


Special thanks!

サンクリドー横浜 小室様・高橋様
クロス職人 黒沢様
各家具ブランド ご担当者様